為替介入はいつ来る?口先介入から実弾介入までの段階と取るべき行動を完全解説
更新日時:2026年01月28日 23:30為替市場では、一定の局面になると「為替介入が来るのではないか」という警戒が一気に高まります。しかし、過去の事例を冷静に振り返ると、日本の為替介入は突発的に行われているわけではなく、口先介入(発言による牽制)から実弾介入まで、明確な段階を踏んで進行していることが分かります。
問題は、「介入が来るかどうか」を当てにいく姿勢です。実際の相場では、今どの段階にいるのかを見誤ることで、過剰ロットのままポジションを保有したり、不要な逆張りを仕掛けたりと、介入そのものよりも危険な判断ミスを犯しやすくなります。
この記事では、過去の口先介入から実弾介入に至る流れを段階的に整理し、それぞれの局面でトレーダーが取るべき行動・取ってはいけない行動を明確にします。「介入はいつ来るのか?」ではなく、「今はどの段階で、どう動くべきではないのか」を判断できるようになることを目的としています。
- 口先介入から実弾介入までの全体像
- ステップ① 初期牽制(警戒の始まり)
- ステップ② 警戒強化(空気が変わる局面)
- ステップ③ 最終警告(断固たる措置)
- ステップ④ 準備段階(レートチェックを含む)
- ステップ⑤ 実弾介入が入った直後の対応
- 過去の事例で見る「口先→実弾」の実際
- 段階別に整理する「取るべき行動」一覧
- まとめ|為替介入で生き残る人の共通点
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要人の発言がどのステージに該当するのか?
動画では、過去の介入時のチャートや実際のニュースを例に挙げながら、「口先介入」から「実弾介入」へ移行する際の空気感を解説しています。
口先介入から実弾介入までの全体像
日本の為替介入は、「ある水準に到達したら突然実行される」という単純なものではありません。過去の実例を検証すると、為替介入は必ず口先介入から始まり、警戒の強度を段階的に引き上げながら、最終的に実弾介入へと進む構造を持っています。
この段階構造を理解せずに相場を見ていると、「まだ大丈夫」「もう介入は終わった」といった誤った判断をしやすくなります。為替介入局面で重要なのは、今がどの段階に位置しているのかを冷静に把握し、それに応じて行動を変えることです。
なぜ為替介入は段階的に進むのか
為替介入が段階的に進む最大の理由は、政府・当局が市場との対話を重視しているためです。いきなり実弾介入を行うのではなく、まずは発言によって市場参加者に是正を促し、それでも改善が見られない場合に次の手段へ進みます。
このプロセスは、国際的な批判を避ける意味でも重要です。為替介入は常に他国から注視される行為であり、事前に「過度な変動」や「投機的な動き」を問題視してきたという説明可能性を確保する必要があります。
その結果、口先介入 → 警告強化 → 最終警告 → 準備段階 → 実弾介入という、市場にとって予兆のある流れが形成されます。
「水準」ではなく「スピード」が問題視される理由
為替介入を巡る議論で誤解されやすいのが、「◯円になったから介入する」という考え方です。実際には、日本政府は特定の為替水準を問題視しているわけではありません。
当局が繰り返し強調しているのは、短時間で一方向に進む急激な変動です。これは、実需ではなく投機的な取引によって相場が歪められている可能性を示すため、介入の正当性を主張しやすくなります。
そのため、同じ水準にあっても、緩やかな値動きのときと、短時間で数円動くときでは、当局の警戒度はまったく異なります。介入局面を判断する際は、価格そのものよりも変動のスピードと一方通行性に注目する必要があります。
介入判断と執行の役割分担(財務省/日本銀行)
為替介入に関する意思決定と実務は、明確に役割分担されています。介入を行うかどうかを判断するのは財務省であり、実際に市場で売買を執行するのは日本銀行です。
つまり、日本銀行が独自の判断で為替介入を行うことはありません。財務省の判断に基づき、日銀がオペレーションを担当するという構造になっています。
この役割分担を理解しておくことで、「誰の発言がどの段階を示しているのか」を読み取りやすくなります。特に、財務大臣や財務官による発言は、実弾介入に近い段階を示唆するシグナルとして重視されます。
ステップ1 初期牽制(警戒の始まり)
ステップ1は、為替介入プロセスにおける最も早い警戒段階です。この時点では、実弾介入が差し迫っているわけではありませんが、当局が為替市場の動きを不快に感じ始めているサインと捉えるべき局面です。
多くのトレーダーが見落としがちなのは、「まだ介入は来ない=無視していい」という判断です。実際には、この段階から言葉のトーンや頻度が徐々に変化し、次のステップへ進む土台が作られます。
この段階で使われる典型的な口先ワード
初期牽制では、当局は強い表現を避けつつ、市場に対して静かに警戒メッセージを送ります。代表的なフレーズは以下のようなものです。
「為替の動向を注視している」
「最近の為替の動きには関心を持っている」
「為替はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」
この段階の発言は単体では危険度は高くありませんが、同じ表現が繰り返され始めた場合は、次の警戒段階への移行を示唆します。
市場心理と値動きの特徴
ステップ1の市場では、多くの参加者が「いつもの牽制発言」と受け止め、相場は基本的にトレンドを維持します。チャート上も、発言直後に一時的な調整が入る程度で、大きな流れが変わることは稀です。
ただし、内部では徐々に心理の変化が起き始めます。短期筋は「一応、頭の片隅に入れておこう」と警戒し始め、ポジションの積み上がり方が鈍くなるのが特徴です。
この段階で重要なのは、値動きそのものよりも、発言の頻度と話者です。財務省幹部クラスの発言が増え始めると、市場は次の段階を意識し始めます。
取るべき行動・取るべきでない行動
初期牽制の段階では、過剰に身構える必要はありませんが、何もしないのとも違う対応が求められます。
この段階で取るべき行動
現在のポジションサイズを把握し、ロットを増やし過ぎていないか確認する
当局発言の回数・表現の変化を継続的にチェックする
次の警戒段階に備え、縮小・利確のシナリオを頭の中で整理しておく
この段階で取るべきでない行動
「もうすぐ介入が来る」と決めつけて逆張りを仕掛ける
警戒発言を完全に無視してフルロットで追撃する
ステップ1の本質は準備段階です。ここでの正解は当てに行くことではなく、次の段階に移った瞬間に行動を変えられる状態を作ることにあります。
ステップ2 警戒強化(空気が変わる局面)
ステップ2は、為替介入プロセスの中で市場の空気が明確に変わり始める段階です。初期牽制では静観していた市場参加者も、この段階に入ると「今回は少し様子が違う」と意識し始めます。
実弾介入が目前というわけではありませんが、当局が単なる注意喚起から一段踏み込んだ警戒姿勢を示している点で、リスク管理の重要度は一気に高まります。
「急激」「投機的」という言葉が意味するもの
警戒強化の段階で頻繁に使われるのが、「急激な変動」「投機的な動き」「一方的な動き」といった表現です。これらの言葉は、単なる感想ではなく、当局が問題視しているポイントを明確に示すキーワードです。
ここで重要なのは、当局が為替の水準そのものを問題にしているわけではないという点です。問題視されているのは、短時間で一方向に進む値動きであり、実需では説明しにくい相場の歪みです。
短時間での大きな値幅
押し目や戻りを作らない一方通行の動き
投機筋のポジションに引っ張られている相場
これらが重なったとき、当局は「市場機能が十分に働いていない」と判断しやすくなり、次の段階へ進むための論理的な根拠が整っていきます。
この段階でリスクが跳ね上がる理由
ステップ2でリスクが急上昇する理由は、相場の方向性そのものではなく、ボラティリティが不安定になるためです。まだ介入が行われていないにもかかわらず、市場はすでに「最悪の事態」を意識し始めます。
その結果、次のような変化が起こりやすくなります。
短期筋がポジションを軽くし始め、値動きが荒くなる
発言ひとつで急な戻しや押しが入る
ニュースやヘッドラインに対する反応が過敏になる
この局面では、「トレンドはまだ崩れていない」という認識だけでポジションを維持すると、想定外の値動きで被弾する確率が一気に高まります。
ロット調整・利確判断の実務的目安
警戒強化の段階で求められるのは、相場を当てにいく判断ではなく、リスクを段階的に落とす実務的な対応です。
この段階で取るべき対応の目安
総ポジション量を通常時より二割から四割程度削減する
含み益があるポジションは一部利確し、利益を確定させる
新規エントリーは回数とロットを抑制する
一方で、この段階で避けるべきなのは、「まだ介入は来ない」という思い込みからのロット増加や追撃です。相場が想定どおりに進んでも、リターン以上にリスクが大きくなります。
ステップ2は、勝つための局面ではなく、勝ちを守るための局面です。この段階でロット調整と利確ができるかどうかが、次の最終警告段階で冷静に行動できるかを左右します。
ステップ3 最終警告(断固たる措置)
ステップ3は、為替介入プロセスの中で明確な分水嶺となる段階です。ここまで来ると、当局は単なる警戒や注意喚起を超え、実際に行動へ移る可能性を市場に示し始めていると判断すべき局面になります。
多くのトレーダーが被弾するのは、「まだ実弾は出ていない」という事実だけを根拠に、これまでと同じ運用を続けてしまうことにあります。しかし、この段階では「何が起きてもおかしくない」状態に入っています。
最終警告ワードの具体例と過去の一致事例
最終警告の段階で使われる言葉には、明確な特徴があります。いずれも、当局が実弾介入を正当化するための決定的な表現です。
「過度な為替変動には断固たる措置を取る」
「あらゆる選択肢を排除しない」
「必要であれば適切に対応する」
これらの表現は、過去の為替介入局面と高い一致を示しています。特に2022年の円安局面では、同様の発言が繰り返された直後にレートチェック、そして実弾介入へと進行しました。
この段階では、発言の内容だけでなく、誰が発言しているかも重要です。財務大臣や財務官といった、財務省の中枢に近い立場からの発言は、実弾介入との距離が近いシグナルとして受け止められます。
「まだ大丈夫」と考える危険性
ステップ3で最も危険なのは、「実際に介入が入るまでは大丈夫」という思考です。この考え方は、過去の介入局面で最も多くの損失を生んできた判断でもあります。
なぜなら、この段階では相場がすでに通常時とは異なるルールで動き始めているからです。市場は「次の一手」を織り込み始め、ちょっとした材料でも急変動が起こりやすくなります。
急な戻しや押しが頻発する
ヘッドラインひとつで数十銭から一円以上動く
ストップが狩られやすくなる
この状態でポジションをフルサイズのまま維持することは、方向性に賭ける行為ではなく、偶然に身を委ねる行為に近くなります。
ポジションを半減以下にすべき理由
最終警告の段階で推奨される行動は、ポジションの大幅な縮小です。具体的には、通常時の半分以下までリスクを落とす判断が合理的です。
その理由は明確で、この局面ではリターンの上限よりも、損失の下振れ幅の方が圧倒的に大きくなるためです。実弾介入が入った場合、数分から数十分で数円規模の変動が起こることも珍しくありません。
利益は伸びても限定的になりやすい
損失は一瞬で想定を超えやすい
約定滑りによって損切りが機能しないことがある
ポジションを半減以下にすることは、弱気になることではありません。次のステップ(準備段階・実弾)に冷静に対応するための前提条件です。
ステップ3の本質は、「勝ちに行く」から「生き残る」への切り替えです。この判断ができるかどうかで、実弾介入局面の結果は大きく変わります。
ステップ4 準備段階(レートチェックを含む)
ステップ4は、為替介入プロセスにおいて実弾介入が現実的な選択肢として視野に入った段階です。この局面では、「介入が来るかどうか」を予測する意味はほとんどなく、いつ来ても対応できる状態を作ることが最優先となります。
過去の事例でも、この段階に入ってから市場の緊張感は一気に高まり、値動き・ボラティリティ・ヘッドライン反応のすべてが通常時とは異なる様相を見せています。
「介入はフリーハンド」が出た時の意味
「介入はフリーハンド」という表現は、為替介入に関する発言の中でも極めて踏み込んだ言い回しです。これは、2025年12月22日に片山財務大臣が初めて使用した表現であり、それ以前の介入局面では用いられていません。
この発言が持つ意味は明確です。当局が、介入に関する条件や制約を市場に対して明示的に取り払ったことを示しています。
具体的には、次のような含意があります。
特定の為替水準に縛られない
時間帯を限定しない
回数や規模を事前に示さない
このように、「介入はフリーハンド」という言葉は、従来の「断固たる措置」や「あらゆる選択肢」といった表現よりも一段踏み込み、実弾介入が現実的な選択肢として完全に解禁された状態を市場に示すものです。
この発言が出た局面では、相場を予測する意味はほとんどなく、いつ介入が入っても耐えられるポジション管理が最優先になります。
レートチェックとは何か、市場ではどう観測されるか
レートチェックとは、金融当局が金融機関に対して現在の為替レートや取引状況を非公式に確認する動きを指します。表向きは通常業務の範囲内とされますが、市場では実弾介入の事前準備として強く意識されます。
実務的には、以下のような形で観測されることが多くなります。
一部報道機関が「当局がレートを確認した」と伝える
特定時間帯に不自然な値動きや出来高の変化が出る
市場参加者の間で急速に警戒感が広がる
重要なのは、レートチェックが入ったからといって必ず即介入が行われるわけではないという点です。ただし、過去の事例では、レートチェック後に何らかの実弾が続いたケースが多く、この段階でのリスク評価は一段引き上げる必要があります。
昨今の為替介入では、レートチェックが入らずに実弾介入が行われたという事例もありますので、レートチェックがない可能性も考慮しておく必要性があります。
この局面での"守り特化"行動チェックリスト
ステップ4では、「どう取るか」ではなく「どう守るか」が判断基準になります。以下は、この局面で優先的に実行すべき行動です。
新規エントリーを原則停止する
保有ポジションをノーポジションまで縮小する
成行注文やタイトな逆指値の使用を避ける
薄商いの時間帯をまたぐポジション保有を控える
この段階で最も避けるべきなのは、「もう一段動くはずだ」という期待からポジションを維持・追加することです。介入が入った場合、逃げる時間はほとんど与えられません。
ステップ4の正解は、利益を伸ばすことではなく、介入局面を無傷で通過することです。この判断が、次の実弾介入局面で冷静に行動できるかを左右します。
ステップ5 実弾介入が入った直後の対応
実弾介入が入った直後は、為替介入プロセスの中で最も事故が起きやすい時間帯です。値動きの方向を当てにいくことはほぼ不可能であり、ここで求められるのは利益を狙う判断ではなく、生存を最優先する行動です。
過去の介入局面では、この直後対応を誤ったことで、それまで積み上げてきた利益を一瞬で失ったケースが数多く見られました。
なぜ介入直後30分が最も危険なのか
介入直後の市場では、通常の相場環境がほぼ機能していません。実需・投機・アルゴリズム取引が同時に反応し、価格形成の秩序が一時的に崩れるためです。
この時間帯に特有のリスクは以下のとおりです。
スプレッドが急拡大し、約定条件が極端に悪化する
レートが飛び、想定した価格で損切りが成立しない
一度の介入で終わらず、断続的な動きが入る可能性がある
この状態では、テクニカル分析や過去の値動きはほとんど参考にならず、どの方向にポジションを持っていても不利な状況になります。
0〜30分の安全行動プロトコル
介入直後の三十分間は、明確な行動ルールを事前に決めておくことが重要です。以下は、過去の介入事例から導かれる安全性を最優先した対応指針です。
新規注文は一切行わない
自動売買やスクリプトは即時停止する
介入方向と同方向の保有ポジションがある場合は欲張らずに利食い
介入方向と反対方向の保有ポジションがある場合は、即座に損切り
値動きの方向ではなく、値幅とスプレッドの状態を確認する
この時間帯の正解は、「何もしない」という選択を意図的に取ることです。動かないことが、結果的に最大のリスク回避になります。
介入直後三十分は、トレードを休むための時間です。ここでポジションを取らなかったこと自体が、正しい判断になります。
やってはいけない行動の典型例
実弾介入直後に繰り返される失敗パターンには、明確な共通点があります。以下は、特に避けるべき行動です。
介入方向へ勢いで飛び乗る
急落や急騰を見てナンピンを行う
「もう一段あるはず」と決めつけて粘る
SNSや速報を見ながら感情的に売買する
これらの行動は、いずれも相場を制御できているという錯覚から生まれます。実弾介入直後の市場は、個人トレーダーが主導権を握れる環境ではありません。
また、実際の相場では『介入ではない急激な値動き(なんちゃって介入)』が起こる事もあり、これを介入と誤認するとその直後に起こる急速な巻き戻しで大きな損失を抱える事もあります。
為替介入の暗黙のルール
為替介入には、実は暗黙のルールがあります。
それは 「半年で3回以内」「1回あたり3営業日以内」・・・というものです。
これはIMFが定義する変動相場制の基準で、各国の介入は基本的にこの枠内で行われます。
つまり、為替介入が行われたら、その後、最大3営業日は再度の為替介入が行われる可能性があるという事。
なので、介入が行われたからと言って、すぐにリバウンド狙いで仕掛けると第2波でやられる可能性があるという事です。
リバウンド狙いで仕掛ける時は、介入後3営業日を待ってから仕掛ける事を心掛けましょう。
ステップ5の本質は、「勝負しない勇気」です。ここで無傷でやり過ごせた人だけが、次の通常相場に集中することができます。
過去の事例で見る「口先→実弾」の実際
為替介入は毎回まったく同じ形で行われるわけではありませんが、過去の事例を振り返ると、段階構造が明確に確認できるケースと、例外的に段階が短縮されたケースに大別できます。
ここでは代表的な四つの事例を取り上げ、それぞれが現在の相場判断にどのような示唆を与えるのかを整理します。
2022年|口先・レートチェック・実弾が揃った教科書例(詳細時系列)
2022年の円安局面は、日本の為替介入史の中でも最も段階構造が明確に観測できたケースです。口先介入から実弾介入までが、時間をかけて積み上げられていきました。
2022年6月から8月
円安進行が加速し始め、「為替の動向を注視している」「急激な変動には懸念」といった初期牽制の発言が増加
市場はこれを従来どおりの口先介入と受け止め、トレンド自体は維持
9月上旬
「断固たる措置」「あらゆる選択肢を排除しない」といった最終警告ワードが明確に使われ始める
市場参加者の間で、実弾介入を意識したポジション調整が進行
9月14日
当局によるレートチェックが報道され、市場の緊張感が急上昇
値動きが荒くなり、短期筋の撤退が目立ち始める
9月22日
日本単独による実弾介入が実施され、短時間で数円規模の急変動が発生
当日中の公式発表はなく、後日になって介入実績が公表
10月
断続的な実弾介入が行われ、市場は完全に「介入警戒モード」へ移行
二〇二二年のケースは、「口先」「最終警告」「レートチェック」「実弾」という全ての段階が可視化された典型例であり、現在の相場判断における基準点となります。
2024年|事前サインが弱かった異例ケース(日時明記)
2024年の円安局面における為替介入は、2022年とは異なり、明確な最終警告やレートチェック報道がほとんど確認されないまま実弾が投入された点が特徴です。市場参加者にとっては、時系列で振り返って初めて全体像が見えるケースでした。
2024年4月中旬
ドル円が155円台へ接近し、円安スピードが加速
当局発言は「過度な変動には適切に対応」といった一般的な警戒表現に留まる
2024年4月26日
日米財務相会談が行われ、「為替は市場で決定されるべきだが、過度な変動は望ましくない」との認識で一致
市場では「牽制はあるが、すぐの介入はない」と受け止められる
2024年 4月29日(日本時間)
ドル円が160円台へ急接近する中、短時間で急激な円高方向への変動が発生
市場では「実弾介入が入った可能性が高い」との観測が急速に広がる
当日中に介入の有無について公式な発表は行われず
2024年 5月2日(日本時間)
再び大きな円高方向への急変動が発生
市場では「断続的な実弾介入が行われている」との見方が支配的となる
2024年 5月下旬
財務省が介入実績を公表し、四月末から五月初旬にかけて大規模な円買い介入が実施されていたことが事後的に確認される
二〇二四年のケースが示した最大の教訓は、明確な最終警告やレートチェックがなくても、値動きのスピード次第で実弾介入は実行され得るという点です。段階モデルは有効ですが、常に完全な形で表面化するとは限りません。
2011年|G7協調介入で段階が一気に進んだ例
2011年の東日本大震災後には、円が急騰する局面が発生しました。このときは、日本単独ではなく、G7各国と協調した介入が行われた点が大きな特徴です。
このケースでは、通常のような長い口先介入の積み重ねはなく、「過度な変動は望ましくない」という国際的な合意が示された直後に、実弾介入が実施されました。
協調介入の場合、段階が一気に短縮される傾向があり、通常の国内介入とは異なる判断基準が適用される点に注意が必要です。
1998年|日米協調介入に見る例外パターン
1998年の円高局面では、日本と米国が協調して為替介入を行いました。このときも、明確な口先介入の積み上げよりも、国際的な政策判断が優先された形となっています。
この事例では、為替水準そのものが世界経済に与える影響が大きいと判断され、段階を踏む余地がほとんどないまま実弾が投入されました。
日米協調やG7協調といった枠組みが前提となる場合、通常の「段階モデル」は参考にはなるものの、完全には当てはまらない点を理解しておく必要があります。
過去事例から分かるのは、為替介入は原則として段階的だが、国際協調が絡む場合は例外が起こり得るという点です。
段階別に整理する「取るべき行動」一覧
為替介入局面で最も重要なのは、相場の方向を当てることではありません。今がどの段階にあり、その段階では何をしてはいけないのかを明確に切り替えることです。
ここでは、これまで解説してきた各ステップごとに、取るべき行動を実務目線で整理します。
ステップ1〜2:通常運用+警戒
初期牽制から警戒強化の段階では、相場はまだ通常の延長線上にあります。この局面では、過剰反応を避けつつ、警戒レベルを一段上げる対応が適切です。
基本的なトレード方針は維持する
ロットを増やす判断は控える
当局発言の頻度や表現の変化を記録する
この段階では、動き過ぎないことが最も重要です。準備はするが、勝負はしないという姿勢が求められます。
ステップ3:リスク削減が最優先
最終警告が出始めた段階では、相場環境そのものが変質します。ここからは、利益を伸ばす判断よりも、リスクを減らす判断が優先されます。
総ポジション量を通常時の半分以下に抑える
含み益があるポジションは計画的に利確する
新規エントリーは厳選し、回数を減らす
この局面でフルロットを維持することは、相場観ではなく運に身を委ねる行為に近くなります。
ステップ4:原則ノーポジという判断
準備段階に入った時点で、為替介入は「起こり得るイベント」ではなく、いつ起きてもおかしくない事象に変わります。
新規取引は原則として行わない
保有ポジションは最小単位、出来ればノーポジションにする
就寝前や外出前は必ずポジションを整理する
ノーポジションは逃げではありません。最も合理的なリスク管理手段です。
ステップ5:取らないことが最善な時間帯
実弾介入が入った直後の時間帯では、通常のトレード判断は通用しません。この局面での最適解は、取引をしないことです。
新規注文を完全に停止する
自動売買や補助ツールはオフにする
値動きは観察のみに留め、判断しない
この時間帯に何もしなかったことが、後から振り返って最大の正解になるケースは少なくありません。
ステップ5は、勝ち負けを決める場面ではなく、資金を守る場面です。
まとめ|為替介入で生き残る人の共通点
為替介入は、相場の中でも特に感情と誤解が入り込みやすいイベントです。しかし、過去の事例を冷静に振り返ると、介入局面で大きな損失を避けているトレーダーには、いくつかの共通点があることが分かります。
それは、高度な予測力や特別な情報ではなく、判断の軸をどこに置いているかの違いです。
介入は当てに行くイベントではない
為替介入において最も多い失敗は、「いつ介入が来るか」「どこまで動くか」を当てにいく姿勢です。実弾介入は当日公表されないのが原則であり、事前に正確なタイミングを読むことはできません。
それにもかかわらず、介入を狙った逆張りや過剰なロットで勝負してしまうと、一度の判断ミスで取り返しのつかない損失を被る可能性があります。
為替介入は、利益を得るための材料ではなく、リスクを下げるための警告として扱うべきイベントです。
「方向」ではなく「段階」を読む
本記事で繰り返し強調してきたとおり、為替介入は突発的に行われるものではなく、段階的に警戒レベルが引き上げられていくプロセスを持っています。
生き残るトレーダーは、「円高か円安か」という方向性よりも、今がどの段階に位置しているのかを重視しています。その段階に応じて、ロットを減らし、取引を控え、時には何もしないという判断を選びます。
この視点を持つことで、介入局面は恐れる対象ではなく、行動を切り替えるための明確なサインとして捉えられるようになります。
勝つよりも負けない判断が最終的な成績を決める
為替介入の局面で大きく勝とうとする必要はありません。むしろ重要なのは、大きく負けないことです。
介入警戒が高まる局面で資金を守れたトレーダーは、通常の相場環境に戻ったときに、再び冷静な判断で取引を再開できます。一方で、介入に被弾したトレーダーは、その後のチャンスを活かす前に市場から退場してしまいます。
為替介入で生き残る人の共通点は、「勝負しない判断を選べること」です。その積み重ねが、最終的な成績の差となって表れます。
