FXで何やっても勝てなくて、やったコト

損切りずらしは破滅への一本道~悪魔の囁きをシャットアウトする為に~

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トレードを続けていると分岐点となったトレードや忘れられないトレードが出てきます。私にもそういったトレードがあり、不思議な事に気持ちよく勝ったトレードよりも苦しかったトレードや手痛い敗北を喫してしまったトレードばかりが忘れられない記憶となっています。

そんな中でも、数年前に大負けしたトレードは最悪な記憶として脳裏に刻みこまれています。

その日は、下落基調にあり、前日から戻り売りが入ったものの、2日前に付けた安値更新には至らずと言う値動きでした。基本的には、売り目線で構えており、売り場を探して売って行こうという考えを元に相場を見ていました。

相場を見ていたところ、戻りと思われる上昇(結果的には戻りではなく大反発でした)の動きが起こり、その当時、逆張り手法を採用していた私は、ターゲットと考えていたプライスで逆張りを敢行、エントリーと同時に前日の高値の10pips上に損切りの注文を出しました。

ここまでは別に何の問題も無く、今振り返っても、逆張りするならそれはそれで良いと思ってますし、その時の手法の判断として、そのプライスで逆張りすると決めていたわけですから、手法に従ってエントリーしただけと言う話なのですが、この日は前の週大勝ちし、枚数を一気に増やしたばかりで多少の気負いがありました。枚数を増やした後だけに負けたくない・負けられないという気持ちが強かったのだと思います。

エントリーした後、思ったように値が下がらず、思惑とは逆行してしまい、損切りラインへと近づいて行ってしまいました。ここで私は、損切りラインを前日高値の10pips上から、前日高値の20pips上へずらしました。しかしプライスは容赦なく上がり続け、その度に10pipsずつ損切りを上にずらし、最終的には当初よりも100pipsも損切りをずらし-120pipsと言う損失を被る形になりました。ちなみに当初指定したポイントで損切りしていれば、20pips程の負けで済んだトレードでした。

このトレードで大敗を喫した私は、取り返したい一心から、手法も何もない位置で再度ショートのエントリーを敢行、そのエントリーでも40pips程の損切りずらしをしてしまい、2日で50万円ほどやられるという(当時の私にとって)大敗を喫し、前週の大勝ちした分を全て吐き出し、悔しくて部屋の中で絶叫してしまいました。ただ、一片の冷静さは残っていたのか、FX口座から全額出金の手続きを行い、その日はそれ以上のトレードをしないようにした事だけは、今振り返っても評価できる行動だったかなと言う気がします。

本日は、2016年7月12日ですが、ユーロ/円相場の値動きがその時と似通ったような値動きで、その当時の事を思い出してしまい、今この記事を書いています。今日は、誰もがしてしまった事があるであろう損切りずらしとメンタルについてのお話をして行きたいと思います。

損切りずらしは奏功する事もあるのがタチの悪い所

損切りずらしは、一度手を染めてしまうと何度も繰り返してしまう麻薬的な側面もあります。

タチが悪い事に損切りずらしはやったら絶対に負けるというわけではなく、時にそれが奏功して建値まで戻ったり、利益になったりする事があります。そういう体験をしてしまうと『成功体験』から、次もそうなるだろうという事で毎回のように損切りずらしをするようになってしまい、いつか極大の損失を生んでしまうという事になります。

この状態になってしまうと末期状態とも言え、損切りの注文を入れていないのと変わりありません。こうなってしまったら、極大の損失を被る準備完了、後は時間の問題という事になってしまいます。

損切りずらしはウマい人でもしてしまう

損切りずらしは、何もFXの初心者だけがしてしまう事ではありません。時に中級者以上の人であっても損切りずらしをやってしまったり、トレードに自信がついてきた時に損切りずらしをしたいという心理状態になったりもします。ある程度収益もあがり、自分の相場観やトレード手法に自信が出てきた時に陥りがちな心理状態でもあります。

損失を確定させたくないばかりに損切りをずらしてしまうという心理になるという事は、トレーダーであれば誰もがなる可能性のある心理状態でもあります。損切りずらしはトレーダー個々のメンタルの問題以外の何物でもなく、それが良くない事だと頭では分かっていても、ついついやってしまって、手痛い損失を被ったりしてしまう事があります。

人間と言うのは不思議なもので、頭では『こんな事やってたらいつか退場クラスの損失を喰らうかも知れない』と思いながらも、実際にその憂き目にあわないとやめられないという愚かな一面を持っています。

それが良くない事だと分かっていて、『こんな事やってたらいつか退場クラスの損失を喰らうかも知れない』という事に考えが及んでいるのにそれを繰り返してしまう理由は、『負けたくない』という事に集約されてくるのだと思います。とにかく負けたくない・負けを認めたくないという心理から、『損失を確定させる』と言う行為を行う事が出来ないという事なのですが、相場は100%勝つというわけにはいかない世界です。

そういう世界である以上、負けてしまった時にどういう負け方をするか?いかに負けを小さくするかはとても重要なファクターでもあります。

損切りずらし癖を矯正するには?

損切り=ストップロスは、文字通り『ロスを止める』という事で、損失の拡大を防ぐ為に行う行為です。FXの書籍等でも、損切りの重要性はクドイほどに書かれており、誰もが損切りの重要性を知っています。

損切りの重要性は頭では分かっているけれども、ついついやってしまうのが損切りずらしであり、それが常態化しているという自覚があるのであれば、それを矯正する為に何らかの策を講じる必要性があります。

私も数年前、損切りずらしに手を染めてしまった事があり、それが常態化しつつあったという経験があり、それを矯正する為にいくつか対策を行った事があります。損切りずらし癖がある事を自覚しながら、それを矯正出来ないというトレーダーの方々のお役に立つ部分もあると思うので、以下にそれを列挙してみたいと思います。

対策1:損切りポイントを熟考する

損切りずらしをするという事は、負けを確定させたくないという他にそもそも、『損切りポイントが合理的でない』と言う理由もあり得ます。

エントリーした後、『ここまでは見よう』と言う気持ちになってしまって損切りをずらしたりするわけですが、そうであれば最初から『ここまでは見よう』と思うプライスに損切りを置けば良いという話で、そのプライスに損切りをおいた時、利食いポイントとの比較から『リスクに見合うエントリーであるのか?』という視点も自然と身に付く為、建設的な対策でもあります。

対策2:損切り・利食いの注文を出したらチャートを見ない

トレードと言うのは、エントリーするまでにやる事や考える事が沢山ありますが、エントリーした後は、エグジットするか?ホールドするか?のどちらかの決断をする以外にやる事はなく、必要最低限、損切り・利食いの注文を入れておけば、後はやる事はあまりありません。

損切りずらしをしてしまうという心理は、エントリーした後、チャートに張り付いて見ているからこそおこる心理でもあります。多少乱暴な方法ではありますが、チャートを見ていると少しでも損切りに近づけば不安になって損切りずらしをしてしまうという方は、いっそのこと損切りと利食いの注文だけ入れたら、後はチャートを見ないようにする事で、損切りになった場合でも、最初に入れた損切り注文の所で損切りが出来るようになります。

デメリットとしては、利食いポイントには至らずに切り返してきてしまったようなケースで、裁量による利食いタイミングを逃してしまい、結果、損切りになるという事も起こり得ます。数時間に1回はチャートを見る等して、含み益がのっていれば、損切りを建値決済にする(損切りを有利な方にずらすのはアリと思いますので)と言った対応も考えられますが、そうすると逆に損切りを不利な方にずらせる機会も出来てしまうので、微妙な所ではあります。

ちなみに私は、一時、含み益がのったものが切り返してきて損切りになったとしても、それは仕方ない事と考えて、エントリーした後、損切り・利食いの注文を入れたら、日付が変わるか損切りもしくは利食いになるかするまでチャートを見ませんでした。

これは、上記に挙げたデメリットは確かにあるのですが、『一度負けると冷静さを失い連敗してしまう癖』も併せ持っていた私にとってはメリットもアリ、負けた後に再度エントリーして、立て続けにやられるという事を防ぐという効果もありました。

エントリー過多の傾向があり、負けると冷静な判断を欠いてしまうような人にはおススメの対策かと思います。

対策3:許容できる損失額までしか資金を口座に入れない

仮に1トレードで許容できる最大の損失が10万円とした場合、『10万円+証拠金』しか口座に入れないというモノです。

こうしておけば、証拠金に喰いこんだ時点で強制的にロスカットされるので、損切りずらしのしようがありませんので、原則的には許容できる範囲以上の損失が出来る事はありません。

※突発な材料などで急騰・急落が起こったような場合には強制ロスカットがズレてしまい証拠金に喰いこむ事はあり得ます。ちなみにこのような場合、国内のFXブローカーですと追証もあり得ますが、海外のFXブローカーの場合には、ゼロカットシステムによって証拠金以上の損失が出る事はありません。

一種の荒療治ではありますが、損切りずらしをしようと思っても新たに入金しない限り出来ないので、損切りずらしの矯正にはもっとも効果的です。

損切りずらし癖があり、それを矯正したいけれども、エントリー中はチャートから離れられないような方にはおススメの対策です。

最終的にはメンタルの強さ

損切りずらしは、誰もが陥ってしまう可能性のある症状です。禁煙しようと思っても、精神力だけで禁煙できないのと同じで、何らかの補助や工夫が必要となる事もあり得ます。

FXにおいては、どういう勝ち方をするか?という事以上にどういう負け方をするか?という事が重要になります。良い負け方をする為には、損切りのテクニックを磨く必要がありますが、いかに合理的な損切りポイントを見つけても、それを守れなければ何の意味もありません。

そういう意味で、投資で勝つ為には最終的にはメンタル強さが求められますが、メンタルの強さは自身の理論に自信を持つ事や、取引手法を信じる事だけでなく、決めた損切りをしっかりと行うという事にも必要な要素です。

人は身に沁みるような失敗を実際に体験しないと骨身に堪えない生き物ですが、今、損切りずらしが常態化してしまっているトレーダーの方々が一人でも大怪我をする前にそれを矯正出来る事を心から祈っています。