トレンドライン~相場の形を描いてエントリーのタイミングを計る~
更新日時:2016年10月29日 12:20直線を使うトレードの事をライントレード等と言ったりしますが、直線には2種類の直線があります。
ひとつは高値・安値に引く水平線で、もうひとつがトレンドラインを代表とした斜めの直線です。
トレンドラインに代表される斜めの直線は、補助線としての利用価値が高く、エントリーのタイミングを計ったりする上で有効な局面があります。本日はトレンドラインを含めた斜めの直線について解説をして行きます。
トレンドラインと水平線の違い
トレンドラインは文字通り、トレンドに対して引くラインで、水平線と違い角度がある直線です。
水平線は時間が経過しても『値』が変わらないのに対して、トレンドラインは時間経過と共に『値』が変化して行きます。従って、トレンドラインは『値』に重点を置いたラインではなく時間軸に重点を置いたラインと言えます。
『値』が時間経過と共に変化して行くという特性から、水平線に比べて、サポートライン・レジスタンスラインとしての信頼性は低いと言えます。トレンドラインがサポートライン・レジスタンスラインとして機能する事もありますが、水平線との違いを理解しておく必要性があります
トレンドラインの正しい引き方
トレンドラインは、始点ともう1点を決めればいくらでも引く事が出来てしまいますが、トレンドラインとは本来、トレンドが発生した時に引くラインで、トレンドが発生していないと引く事が出来ません。
ここで言う『トレンド』とは、ダウ理論のトレンドの定義に合致した状態の事を指しています。ダウ理論については、以前、取り上げた事があり、ブログ記事並びに動画にしていますので、そちらをご参考頂きたいと思いますが、トレンドと言うのは以下のような状態にある時にトレンドと認識します。
上昇トレンド・・・安値・高値共に切り上げ続けている状態
下降トレンド・・・高値・安値共に切り下げ続けている状態
従って、上昇トレンドであれば、上の画像のように直近の高値を更新した時に初めてトレンドラインを引く事が出来るという事になります。直近の高値を更新するまではトレンドラインを引く事は出来ませんので、注意が必要です。
直近の高値を更新する(上昇トレンドの場合、下落トレンドの場合は逆)事で、高値・安値の切り上げが確定し、始点から2点目の安値を結んだラインがトレンドラインとして確定します。トレンドラインというモノは、ダウ理論におけるトレンドの定義に沿う形で引くラインであり、ダウ理論に基づいたトレンドのベクトルを直線として示したものとなります。
トレンドラインブレイクとトレンド転換
トレンドラインを見ていく上で、勘違いしてはならない点としては、レートがトレンドラインをブレイクしても、即トレンド転換とはならないという事です。
レートがトレンドラインを割り込むという事は、トレンドの勢いの減速を示唆するものではありますが、トレンドそのものが転換したかどうかは、ダウ理論のトレンドの定義に従って判断する事になります。
即ち、上昇トレンドであれば、高値・安値共に切り上げる形が継続している限り、トレンドラインを割り込んでも、上昇トレンドにあると考え、下落トレンドであれば、高値・安値共に切り下げる形が継続している限り、トレンドラインを上抜いても下落トレンドにあると考えます。
トレンドラインは、あくまでもトレンドのベクトル・勢いを示しているものであり、トレンド自体の継続や転換を示すものではないという事をしっかりと理解しておく必要があります。
上の図の『A』のポイントでは、赤のトレンドラインを下方にブレイクしていますが、直近の安値を下抜けずに直近の高値を更新しています。このようにトレンドラインを割り込んだとしても、直近の高値・安値を切り上げる流れが継続している限り、上昇トレンドにあると考えます。
始点と『A』の安値を結んだトレンドライン(オレンジ色のトレンドライン)を引き直す事が出来ます。元々あった赤いトレンドラインとオレンジ色のトレンドラインを比較すると角度が緩やかになっており、トレンドの勢いが減速しているという事が分かります。
トレンドが転換するのは、直近の高値を更新出来ずに直近の安値を割り込んだ『B』のポイントとなります。
このようにトレンドラインのブレイクはトレンドの転換を意味しませんが、長期・中期・短期のトレンドを絡めて見て行く事で、エントリータイミングを計るツールとして有効利用する事が出来ます。これにつきましては、この記事の中で項を改めてご説明します。
トレンドラインを使ったエントリータイミング
トレンドラインがサポートライン・レジスタンスラインとして機能する相場もありますが、トレンドラインの『値』は過去に付けた高値・安値と言った根拠がある『値』ではありませんので、過信は禁物です。
上の図の『A』は、上昇トレンド中の前回高値のサポートラインとトレンドラインが重なっているラインで、水平線のサポートにトレンドラインのサポートが加わっている事で、水平線のみのサポートラインやトレンドラインのみの場合に比べて、サポートラインとしての信頼度は上がっていると言えます。
対して『B』はトレンドラインのみで『A』に比べてサポートラインとしての信頼度は高くないと言えます。
トレンドライン付近での反発の値動き等を見てエントリーして行く事がセオリーとなりますが、サポートラインに触れたから即エントリーと言うわけではないので、注意が必要です。水平線などのサポレジと重なっているか等の条件も見ながら、総合的に判断して行く必要性がありますが、トレンドラインを使ってトレードをして行くという事は、基本的に『押し目買い』・『戻り売り』をして行くという事です。
以前、ダウ理論の解説をした際に『押し目買い』・『戻り売り』と言うのは、『主要なトレンドに対してひとまわり小さいトレンドが一旦逆行し、再度主要なトレンドの方向性と合致したタイミングで売買を仕掛ける事』だという解説をしました。
トレンドラインをサポートライン・レジスタンスラインとして考えて、エントリーのタイミングを計って行く事もひとつの手ではありますが、長期・中期・短期のトレンドを絡めて見て行く事で、トレードの精度を高めて行く事が出来ます。
上位トレンドと下位トレンドの持合いブレイク
複数のサイズのトレンドとそれぞれに対して引いたトレンドラインを利用したトレード手法のひとつとして、『上位トレンドと下位トレンドに引いたトレンドラインの持合いのブレイク』を狙うという手法があります。
この手法は、私も実戦でよく使うトレード手法で、勝率も高くおススメのトレード手法になります。
上の図は、上昇トレンドをイメージしたものです。以前、ダウ理論の解説をした際に『トレンドには長期・中期・短期の3種類のトレンドがある』という事と『1枚のチャートの中で3種類のトレンドを認識できる』という事を解説しました。詳しくはそちらを見て頂くとして、ここでは割愛しますが、上の図のオレンジ色の波は中期トレンド、青い波は短期トレンドとお考え頂ければと思います。
オレンジ色の中期トレンドは押し目を作りながら、上昇して行っています。緑色のラインは、中期トレンドに対して引いたトレンドラインとなります。
中期のトレンドを分解すると図の中央の辺りのように青いラインで引いた短期トレンドが、下落トレンドを形成しています。この短期下落トレンドに対して引いたトレンドラインが紫色のラインとなります。
紫色の短期トレンドラインと緑色の中期トレンドラインによって、三角持合いが形成されている事が分かります。
『持合い=レンジ』と言う認識を持っておられる方も沢山いらっしゃると思いますし、トレンド進行中の局面では持合いを意識していないという方も沢山いらっしゃると思いますが、実際の相場ではトレンド進行中も含め色々な所で持合いを作っているもので、これを認識してウマく利用して行く事で、エントリーのタイミングを取って行く事が可能になります。
紫色の短期トレンドラインと緑色の中期トレンドラインによって形成された三角持合いが『上方』へブレイクした所でロングをして行く事になるわけですが、このタイミングでのエントリーには以下のような根拠があります。
1.中期の水平線によるサポート
2.中期のトレンドラインによるサポート
3.三角持合いのブレイク
このように複数の根拠が重なるポイントでのエントリーと言え、優位性が高いエントリーポイントと言えます。
メリットとしては、短期波形が完全に折り返す前に入れる為、完全に折り返してから入るよりも損切りが浅目で済み、サポートラインで逆張りをする場合に比べると損切りは深くなりますが、反発の兆候が出た所で入っている為、サポートラインで逆張りをするよりもトレードの安定性が高くなるというメリットがあります。
サポートラインでの逆張りと波形が折り返した事を確認してから入るエントリーの良いとこどりのエントリーポイントと言え、狙っているトレンド(=中期トレンド)の方向性に合致したエントリーでもあり、トレンドフォローの中でブレイクアウトをウマく利用している手法とも言えます。
以下に注意点を解説して行きます。
損切りを何処に置くか?
この場合、基本的にオレンジ色の波形を狙ってトレードをしている事になります。
よって、損切りはオレンジ色の波形の直近安値の下辺りにおきます。
上位トレンドラインをブレイクしたらどうするか?
下位のトレンドラインと上位のトレンドラインによって形成された三角持合いを上位のトレンドラインを割り込む形でブレイクした場合にどうするか?という事ですが、この場合、エントリーはしません。
上位のトレンドに対するトレンドフォローを行うというのが基本方針で、上の図で言えば、上位のトレンドであるオレンジ色の波形が上へ向かっている限り、上目線でのトレードをして行きます。上位のトレンドに対するトレンドラインを割りこんでも、上位のトレンド自体は転換していませんので、上位のトレンドが転換しない限り、目線は変えないという事になります。
実は使い所が多いトレンドラインではない斜めの線
この記事の冒頭で、『トレンドラインはトレンドが発生した時に引くラインでトレンドが発生していないと引く事が出来ない』と書きました。
直線というモノは始点と終点の2点さえ決まればいくらでも引けてしまうので、『トレンドラインではない斜めの線』というモノも引く事が出来ます。
この手のラインは、機能しない事が多いラインなのですが、『トレンドラインではない斜めの線』にも有効なライン、使い道のあるラインというモノがあります。それは何か?と言うといわゆる『アウトライン(チャネルライン)』というモノで、意外と役に立つ場合があります。
まず、アウトラインとは何なのか?という事についてですが、ざっくりと言うとトレンドラインの反対側に引くラインという事になります。
上の画像は、下落トレンドの場合のイメージとなりますが、上昇トレンドであれば高値の方に引くライン、下落トレンドであれば安値の側に引くラインの事を指します。
一般的には、トレンドラインと並行のラインをトレンドラインとは反対側に引いて、チャネルとして利用する事が多いラインなのですが、私はトレンド発生状態にある時にアウトラインを引く事はほとんどありません。
私がトレードをする上で利用している『トレンドラインではない斜めの線』はトレンドが『発生していない状態』の時に引く斜めの線の事で、持合いの形状を認識する為に役立てています。
上の図は、持合いの形状のイメージですが、持合いには実に様々な形状の持合いがあります。
同じ値幅を行ったり来たりするボックスレンジというモノであれば分かり易いのですが、実際の相場では、持合いの上下が水平線ではなく、斜めの線の形状の持合いも沢山出現します。この記事でも出てきた三角持合いやフラッグ、ウェッジ等というモノですが、持合いの形状を認識しておく事は、トレードプランを練る上で有効です。
トレンド状態に無くとも、常にチャートに波形を描き、波の高値同士・安値同志を結んだ斜めのラインを引いておく事で、『持合いの形状』を可視化する事が出来るのです。
また、これらはサイズの違う様々な波形に対して持合いの形状を定義・認識して行く事が可能で、応用を聞かせる事で合理的なエントリーポイントを見出して行く事も出来ます。
まとめ
今回は、トレンドラインを含めた斜めのラインについて解説をしてみました。
斜めのラインは、特性を理解して使う事で、エントリーのタイミングを計る上で、とても役に立ちます。ダウ理論から認識できる水平線を戦略=strategyとすれば、斜めのラインは戦術=tacticsと言えます。
ライントレードの基礎は、あくまでもダウ理論をベースにして波を描き、波の高安に水平線を引く事にありますが、この基礎をマスターすれば、高安の点を斜めの線で結ぶ事で応用を効かせる事が出来るようになり、その事によって、エントリータイミングを取る技術の向上に役立ちます。